_ 三木聡監督脚本作品。2005年の公開で、デジタルリマスター版をテアトル新宿で観た。公開時に劇場で観た記憶はないので、TSUTAYAでビデオを借りたのだろう。
_ 脱力系コメディーというジャンルだそうだが、同じ監督の「インスタント沼」とともに好きな作品だ。
_ スズメは平凡な主婦で、夫は外国に単身赴任で、飼っている亀に餌をやっているか気になって毎日電話してくる。そんなスズメが、スパイ募集の貼紙を見つけ応募する。面接でスパイの夫婦から、スパイは目立ってはいけない、平凡でいなければならないと注意される。でも、それからのスズメの生活は平凡でいることが刺激となる。
_ スズメと同じ日に同じ病院で生まれたクジャクはぶっ飛んでいて、スズメと対照的だ。でも二人は親友だ。上野樹里がスズメで、蒼井優がクジャクというすごい配役。ほかにも癖のある役者がたくさん出てくる。目立たないそこそこのラーメンを作るラーメン屋をしているスパイが松重豊であるのが面白い。井の頭五郎とは違った顔がある。
_ 何回観てもいい映画だ。
_ ジュラシックシリーズの7作目だそうだ。
_ 最初に恐竜が現れてから年月がたち、世間では恐竜への関心がなくなり、恐竜も現代の自然環境に適合できず、南海の孤島でのみ存続している。
_ この作品も最初のころの刺激はなくなり、寅さんの映画のような安心感に満ちている。そういう気持ちで観ればそれなりに楽しい作品だ。
_ 今回感心したのは自然描写だ。自然と言っても、現実にはあり得ない、CGが作り出した絵だ。いくつもの岩山の絶壁から、たくさんの滝が白い水しぶきを立てて落ちている。そこを翼竜が舞う。ジャングルクルーズはTレックスに追いかけられる。海には巨大なモサザウルスがいて船がひっくり返えされる。
_ 映画の楽しみは、見たことがない世界を体験することで、それが現実でないことは問題でない。映画監督は、「いい絵が撮れた」というが、映画にとって一番大事なものは絵なのだろう。
_ 私はたくさんの映画を観てきたが、ストーリーは朧気にしか覚えていない。しかし、特定の場面(絵)は鮮明に脳裏に残っている。それが、自然の描写である場合には、現実に見たものか映画の一場面かは判然としないことがある。
_ 日本政府は米英との開戦が迫る昭和16年に総力戦研究所という組織を立ち上げた。そこには、官民を問わず選別されたトップの頭脳が集められた。彼らは、日本が米国等と戦った場合の結果を予測することになった。
_ シミュレーションにより日本は3年余で敗北することが判明した。しかし、この研究は日本の政策には影響を与えなかった。
_ この中で、東条英機が言っていたのは、和平を選択した場合、日本は中国大陸から撤退することになり、それまでの戦争で犠牲になった10万以上の兵士の死は無駄になり、以後米国は日本を従属国として扱うことになり、日本精神は失われる。そのような未来を天皇は望まないだろう。
_ この選択肢のシミュレーションを作ってみたら面白いと思った。その当時、日米戦わばというたぐいの書物が何百冊も出版されていたという。国民は、総力戦研究所のような情報も分析力も有していなかったので、当然戦争には日本が勝つという未来を信じていた。
_ 仮に、内乱のような事態にならずに和平が成立したとして、日本人は満足しただろうか。大日本帝国は、大陸から手を引き、米国から輸入する石油に頼るしかなく、米国の言いなりになるしかない。
_ アジアに目を向けると、欧米に支配された国ばかりで、日本が手を引けば、欧米の植民地としての状態は継続しただろう。
_ 日本が喧伝していた、大東亜共栄圏は、日本を兄とし、他のアジア諸国を弟とする日本主導の考えだった。しかし、欧米からアジアを独立させるという目的は存在したのだろう。結果からみると、太平洋戦争は欧米による植民地支配を終了させた。
_ 東条は必ずしも間違っていなかった。