_ 不思議な青春映画で、最後のほうは過剰な演出だと思ったが、全体としては好きな作品。
_ 高校時代に、悪ふざけして目立った佐々木という男が面白かった。あのようなチンピラが好きかどうかでこの作品の評価がかわってくるのかも。
_ 私の高校時代にはあのようなはじけたやつはいなかったが、中学時代にはあの手の不良はいた。あれほどかわいくはなく怖かったけど。
_ 映画の演出から見ると、このような起伏のない物語を飽きさせることなく観させる力は大したものだ。特に、せりふの間の取り方に感心した。
_ 佐々木の死を高校時代の仲間に伝えた女が、あなたは佐々木のなに?と聞かれて、10秒ほど沈黙して「友達?」と答えたところは良かった。
_ ユーロスペースで観た。
_ 手塚治虫原作で監督は手塚眞。
_ 主演は稲垣吾郎と二階堂ふみ。
_ 撮影はコロナ以前の東京で行われたが、一年もたっていないのにあの頃の東京は何十年も前の光景のように見える。だからこの作品も3,40年前のシュールな映画のようだ。
_ 二階堂は演技派だから問題ないとして、稲垣もいい味を出している。この人は演技力というより個性というべきか。「13人の刺客」の凶暴な殿様もよかった。
_ そもそも日本にはいい男の俳優がいない。ほかの役者にこの役をやらせて稲垣以上にはまるとは思えない。
_ 江戸末期から明治初期にかけて活躍した実業家、五代友厚の映画。
_ 三浦春馬主演で、観客はほとんどが女性だった。
_ 映画としては、特に傑作とは思わなかったが、三浦春馬は熱演で、主人公と被った。
_ このような状況で映画を観るのはめったにないことだ。五代は、私心のない、日本の未来を信じる情熱的な人物として描かれている。それが本当かはわからないが、観ているほうからすると、スクリーンの中にいるのは三浦春馬その人で、今は亡き彼の姿を見ているという感が強い。
_ 映画の本編が終わった後に、撮影中などの長い未公開映像が流され、はやめに帰った人は損をした。これもほかの映画ではないことだ。
_ 映画の感想ではないが、彼の死は「自死」ではないと思った。このような演技をして、その映画の公開を待たずに自ら死を選ぶことは経験則に反する。従って、彼は、どこかの世界で、未来を信じて今も闘っているに違いないと思う。