_ ネタバレあり。いつもそうですが。
_ 「害虫」(これも傑作)の塩田明彦監督作品。
_ 熊本のある限られた地域で死者が復活するという現象が多発する。死者は、超常的な力により、最もその人を愛していた人の元に帰ってくる。
_ このような思念の物質化による死者の復活は「火星年代記」(レイ・ブラッドベリ)や「惑星ソラリス」(スタニスラフ・レム)で扱われ、いわばSFの定番だが、この作品は群像劇としていくつもの喜びと哀しみを感動的に描く。死者はつかの間の再会の後消えていく。
_ 私は、いじめで自殺した中学生の男子がひそかに彼に思いを寄せていた同級生の女子の元に復活するエピソードが一番好きだった。多分見る人によって感動する対象が違うだろう。私にとって中学校の3年間は特別な時間だった。夢が現実に阻まれる前の最期の期間だったような気がする。学校のグラウンドで再び別れが来ることを知りながらみつめあう二人の姿に感動した。私にそのようなことがあった訳ではなく、ノスタルジーが具体的な形を持っているということではないが、純粋でありえた時間がそこにあったという感慨がある。