_ 300人の精鋭のスパルタ戦士が百万のペルシャ軍を迎え撃つ。フランク・ミラーのグラフィックノベルの原作を「シン・シティ」のザック・スタイナー監督が実写映画化した。
_ 全体としてジャパネスクが色濃く、黒澤の「七人の侍」のテーマ、シーンはうまく利用され、他にも黒澤映画からの借用は見られる。映像、色彩、音楽は劇画調で、私はなぜか白戸三平の漫画を大島渚が映画化した「忍者武芸帳」を思い出した。1967年の作品で、公開時に一度観ただけだが強烈な印象を残した。原作の絵を静止画像でつなげ、それに台詞と効果音が加わる。紙芝居のようだが、動かない絵がどんなアニメより迫力があり、白戸三平の荒々しい絵が今にも動き出しそうに迫ってくる。
_ 1967年は面白い年で、ひょっとしたら革命が起きるかもしれないという緊迫感が空気に満ちていた。そんな中でこの作品を観られたのは幸せだった。
_ 「300」もアメリカの今の時代の空気を反映しているのかもしれない。イスラム文明の元であるペルシャとキリスト教文明の元であるギリシャの対決。ペルシャは異様なエイリアンとして描かれ、スパルタの戦士は正義と自由を守る者として描かれる。
_ しかし、描かれたスパルタ戦士は決して従来のアメリカンヒーローではない。彼らは死ぬことを承知で戦いに赴く。いや、むしろ死ぬことが目的のように見える。最後の戦いの前にスパルタ王レオダニスは傷ついた一人の戦士を使者に指名し、これまでの戦いの有様を国に帰って国民に伝えるように命ずる。100万の敵軍に対して300人が勇敢に闘って死んでいった物語を語り継ぐようにと言う。そして、やがて戦士たちの遺志を継いだスパルタ軍はペルシャを打ち負かす。
_ 皮肉なことにここに描かれた思想は自爆テロの思想なのだ。そして日本の特攻の思想でもある。