_ 600ページを超える「三島由紀夫論」を読み終えた。期待して読んだががっかりした。
_ 平野啓一郎は京大法学部卒業のようだが、事案を分析して因果関係を発見する能力はあるようだ。三島は、東大法学部卒で、その点では平野はほかの文芸評論家より優っている。しかし、彼がやっているのは、巨象の鼻や、しっぽや、爪を観察して、剥製を作るような作業で、巨象の中身は空っぽだ。
_ 平野は、20年以上費やしてこの本を書いたとのことだが、それでこの程度なのは残念としか言えない。
_ 平野は、「天人五衰」について、
_ 「来世の本多は、宇宙の別の極にある本多であっても、なんら妨げがない。」ーこの宇宙的な想像は、飛躍的だが、「美しい星」のガン告知後の重一郎を思い出させる。
_ と言っている。ここで「飛躍的だが」と述べているのは、平野が三島について何も理解していないことを示している。
_ この部分は、私が、「滝川希花の冒険」で「卓上のビーズについて書かれた文章」と言っているところの一部だが、三島の世界解釈の到達点を示すものである。