_ 50-50を達成した後の打席は9回に回ってきた。その時のピッチャーは野手だった。MLBでは試合後半で大差がついたときは、ピッチャーを無駄に使わないため野手に投げさせることがある。その場合攻撃側がどのように戦うかが問題になる。
_ 相手側とすれば、試合はすでにあきらめていて、早く終わらせたいのだ。攻撃側とすれば、野手が投げるのだから、容易に得点できる。MLBでは、その場合の攻撃は手心を加えたものにするのが暗黙の了解になっているようだ。
_ 2022年9月15日のエンゼルス対ツインズの試合の8回裏に大谷に打席が回ってきた。その時ツインズのピッチャーは野手のコディ・クレメンスだった。彼は有名なロジャー・クレメンスの息子だ。試合はエンゼルスが9点リードしていて、それ以上点を入れなくてもエンゼルスは勝てる状況だった。そこで、大谷は2ストライクのあと大振りの空振りをしてアウトになった。クレメンスは飛び上がって喜んだ。彼がMLBの試合でとった初めての三振だった。そのあとクレメンスは大谷からそのボールにサインをもらい、ガラスのケースに大事にしまったとのこと。
_ さて、昨日の9回表はドジャースがマーリンズに14対3で勝っていた。上記の例からすると、大谷は三振するか、ゴロでも打ってアウトになればいいということになる。しかし、大谷は特大の3ランホームランを打った。
_ 何が違うのか。一般的な大差の試合の場合は、勝敗はほぼ決していて、勝敗だけが関心であれば、早く試合を終わらせるのがみんなの利益になる。しかし、試合は野球チームのためにあるのではなく、観客、ファンのためにある。
_ 昨日の場合、観客、テレビの視聴者、その他の野球ファンは、大谷に打席が回るのを待っていた。それは野球がショウであって大谷はその主役だからだ。その期待に応えて51-51を達成したのはショーマンシップにかなっている。